腫瘍マーカー

癌細胞は誰にでも存在する一般的な蛋白のほかに健康的な人体には
あまり存在しない特異的な蛋白をもっていることがあります。
腫瘍マーカーはこの特異的な蛋白を調べる血液検査で,現在数多く
の種類(表参照)が発表されていて診断の補助や癌手術後の経過観
察等に非常に有効な手段になっています。
この蛋白は特定の臓器の癌細胞に陽性をしめすものと臓器に対する
特異性が低いものがあります。
しかしながら癌がある程度の大きさになるまで陽性を示さないという性
格があり,陰性であるからといって癌を否定できるものではありません
し,他の要因によって陽性を示すこともあります。
  
この検査は医師とよく相談のうえで行うことが肝要です。  
  



(表)腫瘍マーカー値の生理的変動因子

腫瘍マーカー 年齢・性差 妊娠・性周期 その他
消化管の悪性腫瘍を中心に、もっとも汎用的に用いられる血中腫瘍マーカー
CEA 加齢とともに上昇
性差なし
男性でやや高値
- 喫煙者でより高値
各種癌において比較的一定な陽性率を示す癌マーカー。術後の再発の指標としても有用。
BFP 年齢差・性差共になし 妊娠・性周期の影響なし -
臓器特異性が低く、さまざまな癌において高値となる。
癌の増殖活性を反映するため、治療経過の把握に有用な指標。
TPA 年齢差・性差共になし 妊娠経過と共に上昇 -
悪性腫瘍による免疫能低下の原因物質。進行期に応じて高値を呈するため、
癌のフォローマーカーとして用いられる。
IAP 加齢と共に上昇 妊娠後期に低値 -
肝細胞癌で上昇する、本来は胎児肝細胞由来の血清腫瘍マーカー。
程度の差はあるが、肝炎や肝硬変でも上昇する。
AFP 出生時著高、生後8〜10か月で成人値 妊娠後期に高値 -
凝固第II因子の不全生成物。肝細胞癌に特異性の高い血中腫瘍マーカーで、AFPと相関が低く、
独立した指標になる。
PIVKA-II 年齢差・性差を問わず検出限界以下 妊娠の影響なし -
膵癌、胆道癌をはじめとする各種消化器癌で上昇する血中腫瘍マーカー。
CA19-9

女性でやや高値、若年でより高値
年齢差・性差共になし

妊娠の影響なし Lewis血液型の影響あり
(Lea-b-型で有意に低値)
CA50 女性でやや高値
年齢差なし
妊娠・性周期の影響なし -
膵癌、肝・胆道癌で上昇する血中腫瘍マーカー。ルイス抗原陰性者でも使用可能。
DUPAN-2

年齢差・性差共になし

- Lewis血液型の影響あり
(Lea-b-型で有意に高値)
膵癌をはじめとする消化器癌の血清腫瘍マーカー。良性疾患での偽陽性率が低いといわれる。
SPan-1 加齢と共に上昇
女性でやや高値
- -
消化器系癌や肺腺癌、乳癌に有効な血中腫瘍マーカー。
CA19-9などより癌特異性が高いとされている
NCC-ST-439 閉経前女性でより高値 妊娠初期に高値
性周期の影響なし
-
膵癌で比較的早期から上昇する血中腫瘍マーカーだが、膵炎でも上昇。
エラスターゼ1 加齢と共に上昇
性差なし
- -
SLX 若年層・高年齢層でやや高値
高年齢層で女性がより高値

-

-
主に卵巣癌に有効な血中腫瘍マーカー。子宮内膜症と子宮筋腫の鑑別にも用いられる。
CA125 閉経前女性で男性より高値 妊娠前期に高値
月経時に高値
ABO血液型の影響あり
(O型で有意に低値)
婦人科癌や肝胆膵系の癌に有効な血中腫瘍マーカー。肺癌にも有用性が期待される。
CA130 閉経前女性で男性より高値 妊娠前期に高値
月経時に高値
-
主に卵巣癌で上昇する血中腫瘍マーカー。CA125と高い相関。
CA602 女性では閉経前でより高値 妊娠前期に高値
月経時に高値
-
卵巣癌と再発性胃癌の血中腫瘍マーカー。卵巣癌全体では陽性率が低いものの、
粘液性嚢胞腺癌では高値を示す。
STN 加齢と共に上昇
男性でより高値
妊娠・性周期の影響なし -
消化器癌あるいは卵巣癌で上昇する血中腫瘍マーカー。
CA72-4 年齢差・性差共になし 妊娠中・後期にやや高値
性周期の影響なし
-
CA54/61 女性では年齢差なし 妊娠・性周期の影響なし -
子宮頚部、肺、食道、頭頚部、尿路・性器、皮膚などの各扁平上皮癌で高値となる血清腫瘍マーカー。
SCC抗原 年齢差・性差共になし

妊娠経過と共に上昇
黄体期に上昇

喫煙者でより高値
肺小細胞癌、神経芽細胞腫、神経内分泌系腫瘍の診断と経過観察に有用な血中腫瘍マーカー。
NSE

小児で成人より高値
成人で年齢差なし
性差なし

- -
乳癌の再発・転移のモニタリングに有用な血中腫瘍マーカー。
CA15-3 加齢と共にやや上昇
性差なし
妊娠前期に低値 -
乳癌の血中腫瘍マーカー。乳癌術後のモニタリングや再発乳癌に対する治療効果判定に有用。
BCA225 年齢差・性差共になし 妊娠後期に高値 -
前立腺癌マーカー。PSAとは物質的に異なるため、組み合わせによる正診率の向上が期待される。
PAP 年齢差なし - 前立腺刺激により上昇
前立腺癌で著明に増加。前立腺肥大でも上昇するが、10.0ng/mlを越える場合には
前立腺癌を強く疑う。
PSA 年齢差なし - 前立腺刺激により上昇
血中の遊離型PSAに相当する前立腺癌マーカー。
γ-Sm 年齢差なし - -

腫瘍マーカー値の生理的変動因子
(株)三菱化学ビーシーエル 検査項目解説より